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名古屋高等裁判所 昭和24年(控)481号 判決

被告人

加藤一次郞事

朴一春

主文

原判決を破棄する。

本件を津地方裁判所四日市支部に差し戻す。

理由

職権を以て原裁判所が本件公訴を受理したことの当否に付調査すると、本件起訴状に其の公訴事実として、被告人が酒類製造の免許を受けずして(一)昭和二十四年三月頃四日市市三ツ谷町千七百六十八番地の自宅に於て、麹、米、麦等を原料として燒酎約二斗四合及醪一石六斗を製造し(二)同年三月二十九日頃右自宅に於て濁酒の原料である朝鮮麹(通称ヌルギ)七十一個を製造したものである旨記載され、更に之が罪名罰條として酒税法第十四條第六十條が記載されて居るのに鑑みると檢事は右公訴事実(一)(二)が孰れも酒税法第十四條に違反し、同法第六十條に該当する罪として本件公訴を提起したものと解するの外ない。然るに酒税法第六十條(同法第六十四條も同樣)に該当する罪に付いては、酒造法、國税犯則取締法竝同法施行規則の各規定の趣旨に照し、國税犯則取締法の規定に從い收税官吏又は税務署長が告発を爲すのでなければ、檢事は之に対し公訴提起を爲し得ないものと解するを相当とするところ当裁判所に於て取り調べた告発書に徴すると、本件公訴事実中右(二)の部分に付、上敍告発処分が爲された事跡は到底之を認められないが故に、右(二)の部分に関する公訴提起の手続は、其の規定に違反した爲無効のものたるの疑があり若し然りとすれば該公訴事実に付いては、刑事訴訟法第三百三十八條第四号に依り之を破棄すべきものである。然るに原裁判所が該措置を採らないで、右公訴事実に付いても有罪判決の言渡を爲したのは、同法第三百七十八條第二号前段に所謂不法に公訴を受理した違法が存するものの如くであり、原判決は既に此の点に於て破棄を免れ得ない。

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